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トラム/LRT用語集
1,基本編


【トラムに関わる基礎用語編】

トラム
Tram(Tramway)
【英・仏・独・蘭】

ヨーロッパで路面電車を意味する用語である。フランスではトラムがLRTや路面電車を示す唯一の用語として使われている。ストラスブールやグルノーブルでも当然Tramと呼ばれる。英語圏では古いイメージを避けてLRTを使う。ドイツでも、ベルリンなど「トラム」と案内する都市は多い。ベルギーやオランダでも使われる。イギリス英語においても、路面電車は「Tram」である。

ライトレール
LRT
(Light Rail Transit)【米/英】

「路面電車」では古くさいイメージがつきまとうことから、北米やイギリスでトラムを新しい交通機関としてアピールするために考え出された用語。通常の鉄道(ヘビーレール)に対して、軽量な交通機関ということで命名された。速度や輸送力、定時性などで既存の路面電車と区分している。
 LRTという用語の定義に関しては、論争のタネになっている。厳密な意味でのLRTは、アメリカの法律でLRTとして認められたものだけであるという説もある。その説を応用して、「LRT≠新型路面電車」という人もいるが、実際にはアメリカの多くの交通団体や論者もフランスの「新型トラム」のことを「French LRT」と呼ぶので、「LRT≒近代的路面電車」と解釈して何の問題ない。
 なお、アメリカでは「LRT」と「Streetcar」は別物という扱いになっており、市内のみの短距離の軌道が「Streetcar」、郊外へ延び高速運転を行うのが「LRT」となっている。車両規格なども異なるため、LRTと路面電車をあえて区分する必要がある。背後にアメリカの鉄道史がある。もともと、インターアーバンと呼ばれる都心部を路面、郊外を専用軌道で高速運転する電気鉄道事業があり(阪神や京急など、日本の大手私鉄のモデルになった)、インターアーバンは路面電車(Streetcar)とは別のジャンルとして認識されていた。LRTは、インターバンの現代版のような性質(たとえば、ロサンゼルスのLRTブルーラインは、インターアーバンの代表格だったロングビーチ線の廃線を復活して誕生したもので、文字通りLRTはインターバンの再生バージョンである)を持つ。また、インターバンは普通鉄道(ヘビーレール)とも厳密に区分されていた。つまり、路面電車とも普通鉄道とも、区分する必要があるためにLRTというジャンルが必要である。逆に、日本ではインターアーバンをモデルにした電気鉄道が後にJRとほぼ同じ規格になって普通鉄道の仲間入りしており、アメリカとは異なる歴史をたどった(グローバルスタンダードでは、20mで1067mmゲージの電車のことを決してヘビーレールとは言わない点に注意)。
 なお、今のフランスのトラムは、アメリカで言うところの「LRT」的な路線と「Streetcar」的な路線の丁度中間の性格を持っている。この点から、フランスのトラムを「French LRT」と呼ぶアメリカ人がいることは簡単に理解できよう。それゆえ、日本の「LRT=新型路面電車」という用法は、本家アメリカのStreetcarをLRTと呼ばない限りは、とくに問題はない。

路面電車【日】

日本語での用語。他の用語として、チンチン電車、市電(市営のみ)や都電(東京のみ)なども使われる。路面電車では古い郷愁じみた乗り物であるというイメージが強いという理由で、一部では"LRT"を使おうという意見も多い。と言えども、現在日本の路面電車は広島や長崎、熊本など、近代的な都市交通機関として十分な機能を発揮しているところが多く、路面電車も決してなめられたものではない。

Streetcar【米】
ストリートカー

アメリカ英語で路面電車の意味(アメリカでは、Tramはあまり使わない)。イギリスではTramwayを使う。日本語の路面電車はこの単語を直訳したのだろう。今のアメリカではLRTとは郊外線と直通する新しい交通システムのことで、Streetcarと言えば、観光客向けに古い電車を走らせている路線のイメージまたは、都市内の短距離路線というイメージになる。

Straßenbahn【独】
シュトラッセンバーン

ドイツ語で路面電車。シュトラーセは道、バーンは鉄道だからそのまま「路面鉄道」である。一部の都市ではStadtbahnを使う。
また、Straßenbahn(Strassenbahn)の代わりに、Tramの呼称を使う場合も多い。

Stadtbahn【独】
シュタッドバーン

都市鉄道。ドイツ語で近代化された路面電車の呼称として使われる用語。英語のLRTに相当する。基本的にケルン、フランクフルト、ハノーバー、シュツットガルトなど、都心部の区間を地下化した路面電車を指す用語である。全線地上のフライブルクでもStadtbahnと呼ぶ場合もある。これらスタッドバーンを使っている都市のトラムのうち、地下区間ではUバーンとして案内していることが多く、駅の表示も「U」である。

Metro-Bus【仏】
メトロビュス

フランスのルーアンのトラムを含む公共交通ネットワーク指す用語。直訳すれば地下鉄バスであるが、これはメトロとバスのネットワークという意味である。ルーアンでトラムを建設した当時はまだ路面電車が古くさいというイメージが強く、また地下鉄が都市のステータスシンボルであったことから、ルーアンのトラムは「メトロ」名乗っている。その名の通り、都心部は地下区間となっている。フランスではルーアンのみ、「トラム」という用語を使わない。

Sneltram【蘭】
シュネルトラム

オランダのアムステルダムに走る新型トラムの名称。意味は「急行路面電車」である。第三軌条方式の地下鉄と普通の路面電車を直通運転するために開発されたシステムで、架線用のパンタグラフと第三軌条用の集電靴両方を装備している。これに限らず英語圏以外の国で、トラムに新たな呼称を与えている場合は地下線を持つトラムであるケースが多い。

Pre-Metro【ベルギー】
プレメトロ

ベルギーのブリュッセルで採用されている路面電車の一部地下化のこと。「プレ」の名の通り、地下鉄化の準備を兼ねている。まず、路面電車の一番混雑する区間に地下鉄のトンネルを建設し、とりあえず路面電車を乗り入れさせる。トンネルや駅は地下鉄の規格で作っておく。そしてそれでも輸送力が不足した際に地下区間を延長して、通常の地下鉄に変更するものである。現在、ブリュッセルの東西方向はメトロへの切り替えが完了しており、五両編成の第三軌条方式の電車が走っている。南北線や郊外の環状線ではプレメトロであり、長い地下鉄ホームの一部分だけ路面電車にあわせて床を低くくりぬいている。

ゴムタイヤトラム

トラム(LRT)は建設費が地下鉄に比べて安いと言えども、それなりにお金がかかる。そのため、フランスではゴムタイヤを使って、安価なトラムを開発しようとする機運が高まった。現在、TVR、トランスロール、CIVISの三タイプが開発され、パリの郊外で実験運行していた。CIVISは光学式ガイドを使っている。非接触式のゴムタイヤトラムと言う点では、トヨタが開発したIMTSもこの仲間に入るだろう。ナンシーやカーンなど、実際に採用されるケースも増えている。基本的に駆動はゴムタイヤを使い、ガイドでレールを使うというもので、パリのゴムタイヤメトロと同じ発想である。

TVR

ゴムタイヤトラムの一つ。LRTモードとバスモードのハイブリッドが特徴。現在ナンシーとカーンで採用されている。鉄道車両メーカーとして最大手のボンバルディア社(ドイツのADトランツ社を合併した)が開発した。連接バスを発展させてトラムにした感じのシステムである。通常の鉄道とは異なり、レールは一本のみである。駆動はゴムタイヤで行い、一本のレールの上を滑車状の車輪で案内するシステムである。架線からのトラム走行モード、バッテリーによる電気バス走行モード、ディーゼルエンジン走行モードの三通りが可能である。集電はパンタグラフを利用し、一本レールを帰電線として利用する。ナンシーではトロリーバス同様に二本のトロリーポールで集電しているが、これによりナンシーのTVRはトロリーバスとしても走行可能である。車体はトラムに似ているが、連接バスに近い構造をしている。
 安全上の問題ありと、フランス政府にダメ出しされてしまい、2022年までに姿を消すことになった。

トランスロール
Translohr

ゴムタイヤトラムの一つ。フランスのロール社によって開発された。TVRに比べてトラムに近いシステムである。一本レールで案内+帰電、ゴムタイヤで駆動はTVRと同じである。案内車輪の形状がTVRとは異なり、レールを斜めにつけた通常のフランジ車輪で両サイドから挟み込む方式を採用している。車体はユーロトラムをゴムタイヤ駆動にしたような構造をしている。TVRとは異なり、レールなし走行は考慮していない。フランスのクレルモン=フェラン、イタリアのパドヴァ、ヴェネツィア=メストレ、中国の上海、天津で開業した。日本でも実験運行された。ゴムタイヤトラムの中では、一番鉄道に近く輸送力も高い。

CIVIS
光学ガイド装置付バス

ゴムタイヤトラムの一つで、非接触式ガイドを採用している。道路に描かれた白線をカメラで読み取る光学式を採用している。車体をIrisubus社が、光学ガイド装置をシーメス社が開発した。なお、CIVISとは、本来はIrisubusのインホイルモーター搭載の電気駆動式のバスに、シーメンスの光学ガイド装置を搭載したもののこと指す。単にバスに光学ガイド装置を搭載しただけのものは正確にはCIVISとは言わず、単に「光学ガイド装置付バス」と呼ぶべきだが、厳密なCIVISの方が少数派なので、便宜上光学ガイド付きバスを「CIVIS」と総称して構わないだろう。開発当初は、トロリーバスに光学ガイド装置を搭載した、「安価なLRT」として開発されていたが、ゴムタイヤトラムの需要がさほど伸びない反面、BRT向けに光学ガイド装置自体の需要があったため、シーメンスは光学ガイド装置を単体発売し、現在はBRT向けの非接触バスのガイドシステムに変化した。
 CIVISは、現在ではシステム名ではなくIrisubusの車種名になっている。同社のディーゼル発電機付のインホイルモーターのトロリーバス、Cristalisに光学ガイド装置を搭載するのがCIVISである。なお、CIVIS型車両は、トロリーポール無しも選択可能である。非電化路線向けには、IrisubusのディーゼルエンジンのBRT用バスCrealis型車両や、Agola、Citelisなどの一般向け車両に光学ガイドを搭載する方が多い。もちろん、Irisubus以外のバスにも光学ガイド装置が取り付け可能なのは言うまでもない。また、光学ガイド装置は停留所部分だけに取り付けることも可能で、バス停のバリアフリーのアシストシステムとなっている。

Phileas

オランダ、APTS社によって開発された第四のゴムタイヤトラム。磁気ガイド方式と、インホイルモーターによる全軸操舵システムが特徴。一見すると単なる非接触ガイド式バスにしか見えないが、実はコンピューターによる擬似軌道システムを目したものである。バスと代わらないコストと、LRTなみの軌道敷きの面積を併せ持つ、究極の合理性をもった都市交通を目指したものであった。しかし、肝心の制御装置が未完成で、フランス政府はPhileasのガイド装置を認可していない。せっかくフランスのドゥエー市で軌道設備が完成したにも関わらず、この認可問題から、Phileasは現時点で単なるBRTとして運行されている。なお、信号システムの関係上、Phileasはフランスでは「軌道法」に分類されるため、統計上もトラムとして扱われる。

鉄道乗り入れLRT
カールスルーエモデル Karlsruhe Model
トラム=トレイン Tram-Train

トラムのネットワークの拡大と、都市近郊公共交通ネットワーク強化のために、トラムと鉄道線(DBやSNCFなど、国鉄に相当する鉄道)を直通運転するシステムが開発された。最初に実施したドイツのKarlsruhe市電にちなんで、カールスルーエモデルとも呼ばれる。ヨーロッパの鉄道線は架線電圧が交流の数万ボルトで、かつ在来線といえども時速200km/hで運転を行っているので、路面電車の鉄道線乗り入れは結構技術的に困難な側面がある。カールスルーエでは、最高速度100km/hの複電圧路面電車を開発し、DB乗り入れを実現した。続いてドイツ西部のザールブリュッケン市でも採用され、こちらはDBのローカル線に乗り入れ、国境を越えてフランス・ロレーヌ地方のザルグミヌ市まで直通運転している。フランスでのトラム=トレインとして計画が進んでおり、アルザス地方のストラスブール、ミュールズで採用される予定である。
 このカールスルーエモデルの特徴は単なる直通運転にあるのではなく、国鉄のローカル線をトラム運行に置き換えることにより、小単位での運行を可能にし、少ないコストで増発などのサービス改善を行うことにある。運賃面でも、市電と国鉄の共通運賃を採用したりして、一つの公共交通ネットワーク形成に役立っている。財源面でも、市電乗り入れSバーン化した際に自治体からの財政補助が出ており、国鉄ローカル線への自治体補助の一形態という側面もある。

ツヴィッカウモデル
Zwickau Model

鉄道線とLRTの乗り入れの一形態。鉄道線の車両をLRTに直通させる方法のこと。ドイツ東部のツヴィッカウ市が最初にやったのでこう名乗っている。ツヴィッカウ市では、軽量ディーゼルカーが路面電車に乗り入れしている。なお、路面電車とディーゼルが走るDBの線路は軌間が異なるが、乗り入れ区間の市内線を3線軌道にして対応している。
日本では、福井鉄道がこのスタイルに近い。

動態保存

引退した電車を走らせながら保存していくことを動態保存という。古い電車は日常使う客にとってはサービスが悪いのだが、観光客相手は物珍しさから人気がある。そこで路面電車でも古い電車を保存し、観光客向けに休日などに走らせるケースが多い。
アメリカなどでは街に短い保存運転専用の路面電車を敷き、古い電車を走らせて観光資源にしているところも少なくない。また、動態保存運転用の線路を持つ博物館も少なくない。日本でも、愛知県の明治村と京都市の梅小路公園で昔の京都N電の動態保存運転が行われている。

ケーブルカー(トラム)
路面ケーブルカー
Cable Car【米】

 路面ケーブルカーを用いたトラムもあり、アメリカ・サンフランシスコのものが有名である。電車が発明される前は、馬力に変わる交通手段としてケーブルカーを用いた路面軌道が発明された。サンフランシスコの路面ケーブルカーは、道路上に埋め込まれたケーブルは常に巡回しており、車両がロープをつかんでいる間のみ走行する。停止するときは、車両についたグリップを離し、ブレーキをかけることで行う。電車が発明されると、柔軟性にかける路面ケーブルカーは廃れた。ポルトガルのリスボン市内にも、3ヶ所の路面ケーブルカーがある。リスボンのものは山岳ケーブルとおなじく、つるべ式で二両が交走する。シスコもリスボンも、路面ケーブルカーは観光客に人気である。
 ちなみに、日本でおなじみの山へ登るケーブルカーは、英語ではCable Carとは言わない。山岳ケーブルカーは、英語でフニクラー(Funiclar)と言う。あの「フニクリ・フニクラ」のフニクラーである。アメリカでは、"Cable car"とはシスコの路面ケーブルカーを指す言葉で、イギリスではCable Carはなんとロープウェイのことである(ちなみに、ロープウェイも和製英語。アメリカでは、ロープウェイはAerial Tramway-すなわち空中トラム-と言う)。

馬車鉄道

線路の上を走る馬車を馬車鉄道と呼ぶ。トラムの歴史は電車の歴史より古く、草創期のトラムはすべて馬車鉄道であった。19世紀は、道路の舗装も進んでいなかったため、道路上に軌道を敷設し、そのうえに馬車を走らせるのが合理的だったである。アメリカ、フランスをはじめとして初期のトラムはすべて馬車鉄道であった。日本も、東京都電のはじまりは馬車鉄道であった。馬という生き物を動力とするため、飼育の手間がかかり、しかも馬糞公害が深刻化したことから(馬糞がペストの原因になっていたためである。当時の馬糞公害の深刻さは、実は現代の大気汚染公害より酷かった)、蒸気トラムやケーブルカー、そして都市交通の決定版路面電車とバスが登場するにいたって馬車鉄道は姿を消した。現在走る馬車鉄道は、保存鉄道や観光用のみである。

蒸気トラム

馬車鉄道に代わるトラムとして導入されたのが、蒸気トラムである。鉄道の世界で蒸気機関車が実用化されたので、トラムでも蒸気機関車を使おうというのは自然な発想であった。アメリカやヨーロッパで普及した。小型の蒸気機関車が客車を引っ張る編成が最初に実用化された。馬車より力はあるし、馬糞公害も無くなった点は進化だが、市街地に黒煙をまき散らしたため決して褒められる物ではなかった。電車が発明されると姿を消した。
 余談ながら、伊予鉄道は路面電車上に、蒸気機関車列車を復元した坊ちゃん列車を走らせているが(さすがに、現代の松山市内の道路上に蒸気機関車を走らせる許可は下りなかったのでディーゼル機関車になった)、実は明治の坊ちゃん列車は路面区間を走ってはいなかった。坊ちゃん列車は、松山城北側を迂回して道後温泉へいたる軽便鉄道であった(現在の環状線系等の北部区間にあたる)。後に、市内に路面電車が開業し、軽便鉄道も路面電車に改築されて現代の市内線となった。日本の鉄道史では、都市のトラムで蒸気動力を使った例はほとんど無い(農村部を走る軽便鉄道において、街道上に軌道を敷設した例はある)。

圧縮空気トラム

蒸気トラムが黒煙公害を引き起こすため、それにかわる存在として発明されたのが圧縮空気トラムである。ボイラーの代わりに圧縮空気タンクを搭載し、シリンダーで台車を動かす方式である。フランスで導入されたメカルスキーシステムが代表的。メカルスキー・システムは、フランス人エンジニアであるルイ・メカルスキーによって発明されたもので(メカルスキーはクレルモン=フェラン生まれのポーランド系フランス人)、パリでは1887年から1914年まで運行された。無公害というメリットを持つが、非常に複雑なシステムであったので、あまり普及せず、単純な構造の路面電車やバスが開発されると出る幕がなくなった。

路面ディーゼルカー

 非電化の軌道を道路上に敷設し、ディーゼルカーを走らせるのが、路面ディーゼルカーである。低コストで郊外への市電延伸を模索していた札幌市電は、1958年世界でも珍しい路面ディーゼルカーを登場させた。1963年、麻布方面へ鉄北線を非電化で延長したのである。鉄道の世界ではディーゼルカーが普及し、自動車交通でもディーゼルエンジンを搭載したバスが都市交通で主力となっていったことを考えると、路面ディーゼルカーもつくられてもおかしくないはずだが、なぜか都市内軌道線で路面ディーゼルカーを採用したのは世界でも札幌市電だけである。札幌市電の非電化線は、乗客増に伴いすぐに電化され、路面ディーゼルカーは数年で姿を消した。なお、ドイツのツヴィッカウではディーゼルカーがトラムに乗り入れる形でトラム= トレインを実現(ツヴィッカウモデルを参照)、カナダの首都オタワでディーゼルカーを用いたLRTが登場、札幌以来の再来となった。なお、海外では、鉄道線が併用軌道区間を持つ事が多いため、「路面を走るディーゼルカー」の光景はないわけではない(かつて、日本でも名鉄の犬山橋ではディーゼル特急北アルプス号が併用軌道を走っていた)。

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【その他の都市交通システム編】

トロリーバス

電車同様架線を張って、トロリーポールから集電してモーターで走行するバス。日本では無軌条電車と言う。メリットとしては、電気なので大気汚染公害がない、路面電車に比べて建設費が安い、傾斜地に有利、ということが挙げられる。逆にデメリットとして、架線がないと走れない、走行に柔軟性がなく渋滞に弱い、ということが挙げられる。日本では立山・黒部アルペンルートを除いて廃止されたが、ヨーロッパではフランス、ドイツ、イタリア、スイスや東欧、ロシア、アメリカでもサンフランシスコやシアトルなどで活躍している。路面電車同様、ヨーロッパではトロリーバスの復権が進んでおり、架線なしトロリーバスの開発やガイドウエイ型トロリーバスなども開発されている。

連接バス

通常のバスの輸送力を高めるために、車体を二つつないで大型化したバス。ヨーロッパのどこの都市でも連接バスは見られる。トラムとあわせて公共交通の輸送力強化に寄与している。日本では法律が壁になって導入できていない(特例で千葉の幕張だけは認められている)。連接バスの技術開発も、ゴムタイヤトロリーバスの開発に寄与したことは言うまでもないであろう。

メトロ
Metro(Métro)【仏】

フランス語で地下鉄のこと。元の意味はChemins des Fer Métropolitan(首都の鉄道)の略である。英語のSubway(米)/Underground(英)やドイツ語のU-Bahnとは異なり、元来メトロに地下を意味する語彙は含まれていない。だが、現在メトロはラテン系ヨーロッパの国では「地下鉄」を意味する用語として定着しており、スペインでも地下鉄はMetro、イタリアでもメトロポリターナと呼ばれる。フランスには純粋なメトロは、パリ、リヨン、マルセイユにしかない。フランスと言えばゴムタイヤ地下鉄だが、パリの半分以上の路線は普通の鉄輪式である。リヨン、マルセイユではゴムタイヤを採用。このゴムタイヤ地下鉄、通常の線路の外側にタイヤ走行用の板を敷き、車輪の外側にもゴムタイヤを取り付け、駆動はゴムタイヤ、案内は車輪とするシステムである。フランス方式ゴムタイヤ地下鉄は南米でも採用されている。トゥールーズのVALやルーアンのトラムも交通局はメトロと案内している。
 近年ではLRTや近郊列車にもメトロ呼称を使用するケースも増えている。フランス・ルーアンやイギリス・マンチェスターやポルトガル・ポルトのLRTはメトロと呼ばれる。

U-Bahn【独】
Uバーン

ドイツ語で地下鉄のこと。ドイツに第3軌条方式のUバーンはベルリン、ハンブルク、ニュルンベルク、ミュンヘンにある。ケルン、フランクフルト、シュツットガルト、ハノーバー、ボン、デュッセルドルフなどでは、Uバーンはトラムをやや大型化した車両が地下を走っている。トラムタイプのUバーンは、シュタッドバーンの別名で呼ばれることも多い。

S-Bahn【独】
Sバーン

ドイツ鉄道(DB、元国鉄で、1994年に民営化。日本のJRに相当する)の都市近郊路線の愛称。ベルリンの第3軌条方式のSバーンが有名である。大都市の他、中都市でも近郊電車をSバーンとして運転しているところが多い。トラムに関連して言えば、カールスルーエのDB乗り入れトラムは、Sバーンネットワークとして整備されている。
 また都市近郊線とは別に、地方都市圏のローカル列車を自治体補助の形で運行している地域Sバーンも近年増えつつある。

TER【仏】

パリ以外で運行されるフランス国鉄(SNCF)の地域内普通列車の総称。TERはおおむね赤字で補助金が必要となる。フランスの法律では、地域内の列車は地方(レジオン)政府(州に相当する自治体)が担当することになっているので、通常レジオン政府が補助金を出して運行される。具体的には、各レジオン政府が車両を保有し、SNCFに運行を委託するという形である。ストラスブールやミュールズで計画されているトラム=トランは、当然このTERの範疇にも入る。TERとは、Train Express Régionalの略で、本当は普通ではなく地域急行列車である。JRで言えば快速に相当するものが多い(実はSNCFの地域路線は、列車の運行を休止しバスで代行している路線が多い。その一環で、幹線・亜幹線でも特急CorailとTER快速のみ運行し、各駅停車はバスで代行している区間も少なくない)。

RER【仏】

フランス・パリ近郊と都心を直結する郊外電車の愛称。日本では、急行地下鉄や首都圏急行鉄道などと訳される。Réseaux Express Régionalの略。国鉄の郊外線と都心の急行地下鉄を直結したもので、現在A〜Eまでの5路線が営業している。A線はRATP(パリ交通営団)の直営、C線がSNCF直営、BDE線はRATPとSNCFの共同運行である。ちなみによみは、エルウーエル(Rは日本語の仮名表記不可能な読み方)。

新交通システム
AGT

ゴムタイヤ駆動を採用した小型電車列車による交通システムのこと。AGT(Automated Guideway Transit)とも呼ばれる。自動運転を特徴とする。ゴムタイヤの駆動輪と案内輪が別なのが特徴。地下鉄に比べて建設費が安いが、高架方式なのでLRTよりは建設費が高く、景観面での問題もある。
 日本の方式は、案内輪が側面にある方式(ゆりかもめやニュートラムなど)と中央にある方式(山万、桃花台)との2種類ある。日本では都市交通として本格的に導入されているが、フランスを除く欧米では空港など短距離のシャトル交通として使われているケースが多い。

VAL【仏】

フランスで採用されている新交通システム。ゴムタイヤ駆動で、側面の壁に別の案内用ローラーで案内される点は日本の新交通システムと同様である。地下に導入することを前提に採用されたシステムであり、ミニ地下鉄的な存在として使われる。リールで初めて導入され、レンヌやトゥールーズ、パリのオルリー空港で採用されている。

シンガポールLRT
Light Raipid Transit

シンガポールにもLRTが建設されたが、こちらは新交通システムである。新型路面電車のLRTとは意味が違い、Light Rapid Transitである。

ドックランドLRT
DLR Docklands Light Rail Trainsit

ロンドン市内東部のドックランド地区の再開発に伴い導入されたLRTシステム。1987年開業とイギリスにおけるLRT導入の先駆けとなったシステム。全線高架、第3軌条集電、自動運転で、いわば新交通システムの鉄輪式という感じである。鉄輪式の自動運転方式はここ以外では見られない。

ゴムタイヤ式地下鉄

ゴムタイヤ駆動方式の地下鉄。フランス方式と札幌方式がある。フランス方式では、1435mmの通常の線路を案内線として利用し、外側にゴムタイヤ駆動用の路盤を敷設する。札幌方式では、中央のガイドレールをゴムタイヤで挟む方式を採用している。フランス方式は、フランス3大都市の他に中南米でも採用されている。また、パリ14号線とリヨンD線では自動運転のゴムタイヤ地下鉄となっている。

モノレール

1本レールの高架式鉄道。車体が1本レールに跨る跨座式と、レールからぶら下がる懸垂式がある。地下鉄に比べて建設費が安く、カーブ・勾配に強く路線選定が自由で、用地もとらないというメリットがある。しかし、高架方式で景観面での問題があり、建設費はLRTよりは高い。都市交通機関として使っているのは日本以外では、発祥の地ドイツ・ヴッパタールとアメリカ・ラスベガスくらいのもので、後の路線は短距離のシャトル便のみの採用のようである。

軌道系交通機関

日本では鉄道事業法と軌道法で管轄される交通機関の総称。素直に鉄道と呼ばないのは、2本の鉄レールと鉄の車輪で走行する方法以外のシステムも含んでいるからである。日本では、走行ルートを拘束する何かが存在すれば軌道系交通機関に入るようである。モノレールや新交通システム、ロープウェイはレールに類するものが存在するので当たり前として、磁気テープガイドによるIMTSもガイド走行なので軌道法認可である。トロリーバスは案内装置そのものはないのだが、架線に走行ルートを拘束されるので軌道法管轄となっている。

TCSP【仏】

TCSPとは、フランスで軌道系交通機関あるいはそれに類する交通機関を指す言葉である。Transport Colléctif en Site Propreの略で、意味は専用空間を持つ大量交通機関という意味である。つまりは、軌道系交通機関のように自動車線と区別された走行路を持っていれば、TCSPに当てはまることになる。フランスの交通制度では、TCSPがあるかどうかで、建設費補助金や交通税の税率が変わるのがポイントである。軌道系交通と言わずに占有交通機関と呼んでいるのは、バス専用レーンもTCSPの扱いを受け、トラムと同様の扱いを受けるからである。TCSPの条件は走行空間が占有であるか否かであり、軌道系かどうかは関係がない。日本では鉄道扱いされるトロリーバスも、フランスでは車線が自動車と共通であればバス扱いでTCSPにはならず、車両が普通のバスであっても高規格な専用レーンを走行するならばTCSP扱いされることになる。

専用レーンバス
BRT【英】
BHNS【仏】

バスも、専用の車道を走れば渋滞に巻き込まれないし、定時運行も可能となる。そこで、バス専用レーンを設けてバスの優先走行を行うようになった。これを発展させて、バス専用レーンを延長して長距離の区間のレーンを作れば、バスであってもかなりの定時性・大量輸送可能な交通システムとすることができる。ヨーロッパではトラムを採用できない都市では、このバス専用レーンを使って高規格のバスサービスを提供しているところが多い。
英語では、BRT(Bus Rapid Transit)、フランスでは(Bus à Haut Niveau de Service、高レベルバスサービス)と呼ぶ。BRTは、単に専用レーンにバスを走らせるだけではなく、快適な停留所施設を持ち、輸送力の高い連接バスで高レベルのサービスを提供し、定時性と頻繁運転、わかりやすい路線設定を特徴とする。言ってしまえば、「バスを使ったLRT」である。レーンバス先進都市として名高いのはブラジルのクリチバ市である。クリチバでは、停留所をリングシェルター状のプラットホームにして、バリアフリーも実現している。フランス・ナントでは、BRTで建設し、トラムの通し番号T4系統と名付けた。BRTは他のバス路線とは別格扱いで表示される。

ガイドウェイバス

ガイドウェイバスとは、専用レーン内にガイドレールを設けて、車体につけられたローラーで案内するものである。ガイドウェイ区間ではハンドル操作が無用となり、鉄道に近い形態で運行が可能となる。ヨーロッパや南米ではトロリーバスを使ったガイドウェイバスが結構運転されているほか、日本でも名古屋市北東部の大曽根起点にゆとりーとラインと言う名前でガイドウェイバス路線が営業開始している。日本のガイドウェイバスは新交通システムと互換性を持たせてあり、ガイドウェイバス軌道と新交通の軌道のサイズを同じにして、ガイドウェイバス軌道は新交通システムへの転用を可能にしている。
また、近年の技術開発によって非接触式のガイドウェイバスも開発された。磁気によるガイドを行うトヨタのIMTS、APTSのPhileasと道路上の白線ペイントをデジタルカメラで読み込む光学式ガイドを採用しているIrisubus・シーメンスのCIVISである。

IMTS

トヨタが開発した新交通システム。Intelligent Multimode Transit Systemの略。無線による隊列走行と磁力テープによるガイド走行が特徴のバス。日本版の非接触式ガイドウェイバスと言える存在。ガイド区間では複数台のバスが自動運転で隊列走行を行い、ガイド区間外では普通のバスとして走行できる軌道系とバスのハイブリットシステムが特徴。淡路島の公園で試験走行、2004年の浜名湖花博で園内輸送手段として使われている。従来の走行は車体も試験的で、ニューデザインの車両による本格デビューは2005年の愛知万博から。もともと、このシステムは高速道路での効率的な輸送を目指して開発されたものである。一時期は次世代の交通機関として導入検討を行った自治体も多かったが、基本は高架式のガイドウェイバスの延長にある技術であるためにインフラのコストがかかるため、現在では下火になっている。

ストリーム

イタリアで開発された架線なしトロリーバスシステム。トロリーバスは排気ガスがないのはよいが、架線が景観上問題となる。そのために、架線を地面に埋め込む方式を開発したのがこれである。地面に+と−の架線モジュールを埋め込み、バスの床下に設けられた集電ユニットから集電するものである。そのままだと感電の危険があるので、+線の方を40cmずつに分割、バスが通過する時だけそのブロックに電流が流れるようにしている。仕組みは、バスの集電ユニットに磁石を取り付けておき、+用の通電線を引っ張り上げて通電させる磁力ピックアップ方式を採用している。

インターバン Interurban

インターアーバンとも言う。1800年代後半から1900年代前半までアメリカで発達した電気鉄道の形態。その名の通り電車による都市間連絡鉄道で、都市内は路面軌道、郊外は専用軌道で高速走行を行うという形である。路面電車と混同されやすいが、インターバンは郊外電車・都市間鉄道として可及的高速運転を行うのが特徴である。草創期の日本の電気鉄道のモデルになった存在である。かつては全米中にインターバン路線が存在したが、モータリゼーションの進展により衰退し、多くは戦前に廃止され、戦後まで残ったロサンゼルスやシカゴなどの大規模な電気鉄道網も60年代までにほとんど姿を消した。現在ではシカゴ近郊のサウスショワー線が原型をとどめて存在する唯一の存在である。

Hbf(Hauptbahnhof)【独】
(ハウプトバーンホフ/ハーベーエフ)

ドイツ語で中央駅のこと。Hbfという略称もよく用いられる。トラムの停留所名にもよく使われる。停留所名はHauptbahnhofなのに、路線図などではHbfと略号表記していることも多いので注意されたい。なお、中央駅とはその都市に発着するすべての長距離列車が停車する駅という意味であり、都市の中央にある駅ということではない。大聖堂の真ん前にあるケルンHbfを除けば、ほとんどの都市のHbfは都心から離れたところにある。

Gare【仏】
ガル

フランス語で駅のこと。通常、フランスではGareはSNCF(フランス国鉄)の駅のみを指し、メトロ(地下鉄)の駅やトラムの停留所はStationを使う。トラムの停留所名にもよく使われる。中央駅はGare Centralとなるが、小さな町ならば国鉄駅は大体1つしかないので、Gareだけで中央駅の意味で通じるところもあり、グルノーブルの国鉄駅前停留所名はGareである。  なお、gareの読みはガルである。関西にあるJR某駅高架下のショッピングモールの「ギャレ」は間違った読み方である。また、某私鉄のカードは、定冠詞Laをつけてラガールになっている。フランス語は無冠詞を嫌うので、文法的にはラガールの方が好感が持てる。
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|作成:2003年7月28日、最終改訂2012年3月18日|


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