"Le Tram"トップトラム・LRT用語集目次/索引>用語集3,施設・施策編(このページ)

Homepage

トラム/LRT用語集
3,施設・施策編


【施設編】

併用軌道

トラム/路面電車/LRTの軌道のうち、道路上を走る区間を併用軌道と言う。ちなみに、日本の鉄道路線は、鉄道事業法か軌道法のどちらかの法律に基づき営業されている。路面電車を管轄するのが軌道法である。軌道法では、路面電車は基本的に道路上に敷設することになっている。また、最高速度は40km/h、車長30mという制限がある。道路上を走るので、併用軌道の区間は自動車をどう処理するかが問題となる。自動車乗り入れ禁止にすれば、路面電車は定時運行できることになるが、それを認可するのは警察である。

専用軌道

トラム/路面電車/LRTの軌道のうち、普通の鉄道と同様に道路とは区切られた専用の線路となっている区間を専用軌道という。専用軌道は見た目は普通の鉄道と変わらないことが多いが、軌道法の適用があるので最高速度などの制限を受ける。東京の東急世田谷線は全線専用軌道で路面区間がないが、路面電車扱いされるのはこの路線が軌道法で認可されているからである。なお、広島電鉄宮島線や名鉄揖斐線、福井鉄道の郊外区間は鉄道事業法に基づき認可されている区間で、最高速度も60km/h以上確保されている。

トランジットモール

欧米の都心で見かける歩行者と公共交通中心の道路利用形態。一言で言えばトラムが乗り入れる歩行者専用ゾーンである。都心の目抜き通りを自動車通行禁止とし、歩行者優先ゾーンとする。その上でトラム(場合によってはバスも)を通りに乗り入れさせる。つまり、都心を歩行者優先地帯とするが、足が不可欠なので公共交通を乗り入れさせることにより利便性を高めようとするもの。自動車に比べてトラムは遙かに輸送人員あたりの土地占有率が低いため、十分な歩行空間が確保できる。歩行空間確保と公共交通による利便性向上により、トランジットモールでは都心の集客能力を高めるという効果がある。
ちなみに、これは和製英語で欧米ではこういう言い方はしない。

センターリザベーション軌道

軌道内への自動車乗り入れ禁止をはかるために、分離帯などで車道と軌道を区切った形態の軌道をリザベーション軌道と言う。通常トラムの軌道は道路中央部に敷設される。この中央部の軌道を分離帯を使って柵をしたり、軌道敷きを車道より一段高くして区別したりしているのをセンターリザベーション軌道という。センターリザベーション軌道はリザベーション軌道の中で最も建設しやすく、車道や歩道との空間調整がやりやすい形態である。しかしながら、停留所は車道中央部にあるために、歩道から必ず横断歩道を渡る必要があるという欠点がある。

サイドリザベーション軌道

路面電車の軌道を道路の端によせて敷設し、車道との区別を行う軌道。複線の軌道がどちらかの車線に寄せて敷設されている片側集約軌道と、上下線がそれぞれ左右の歩道に寄せて敷設されている両寄せ軌道の二タイプが存在する。両寄せ軌道は少数派である。このタイプの軌道ならば停留所へ車道を横断することなく到達できるというメリットがある。しかし、軌道を端に敷設すると、沿道建物へ出入りするクルマとのかねあいや車線の調整などやっかいな問題を抱えることになる。そのため、サイドリザベーション軌道は通常、自動車乗り入れ規制を実施している地域でしか採用できない。片側集約軌道の導入の場合、自動車を一方通行化し、通行禁止となった車線に軌道を敷設するという形態が一般的である。両寄せ軌道の場合、よほど道が広い大通りでない限り敷設は困難である。両寄せ軌道はウイーンの環状道路、リングで見ることができる。

センターポール架線柱

トラムの架線は電信柱や沿道の建物から軌道に直交するワイヤーをはり、そのワイヤーに架線を吊すスパンワイヤー方式が一般的である。しかし、それではたくさんのワイヤーが上空を覆うことになり、景観上問題がある。そこで、景観に配慮する形で登場したのがセンターポール架線柱である。これは上下線の間にT字型の電柱を建て、架線を吊すというもので、スパンワイヤーに比べて上空を覆うワイヤーは大幅になくなる。近年のセンターポール架線柱は、街路灯をかねたガス灯風のデザインにして、架線柱自体が都市の景観を作るためのアイテムとして積極的に活用されているケースが多い。

芝生軌道/防振軌道

道路上を走るトラムの走行は、騒音や振動が発生し、住宅密集地などでは無視できない問題となる。そのため、防音・防振設計を施した軌道が開発された。まず、芝生軌道というのは、軌道敷きに芝生を張ったものであり、芝生(と土)によって騒音を吸収させるというものである。芝生による都市緑化という役割も持つ。芝生軌道は比較的簡単に施工できるものの、軌道上を歩くことはできないため都心部の路面区間では使えない。そこで開発されたのが新型の防振軌道である。これは、まず線路敷設する場所に溝を掘ったコンクリート路盤を用意し、溝に線路を防振効果のある特殊樹脂で固定して敷設するというものである。これらの軌道上の工夫と、車両側の防音技術の発展に伴い、トラムの騒音問題は大幅に軽減している。

廃線/貨物線

廃線とは列車が走らなくなって放置されている路線、貨物線とは貨物列車のみが利用する路線である。これらの路線はLRT(トラム)に転用されて有効活用されるケースが多い。アメリカのサンディエゴやドイツ・カッセルは貨物線の廃線を転用した。ロサンゼルスでは1960年代に廃止になったインターバンの軌道敷を利用して敷設された。パリ・トラム2号線に至っては、国鉄の外環状線の廃線を線路も駅もそっくりそのまま転用している。貨物線や廃線を利用すれば建設費が安く押さえられるし、建設工事も楽という利点がある。ただし、廃線や貨物線のルートが需要に沿ったものでないとLRTのルートとして利用することは難しい。現在工事中のパリの環状トラムでは、外環状鉄道の廃線敷転用も検討されたが、需要の問題から環状道路に路線を建設することになった。

このページ先頭へ戻る


【施策編】

TDM
交通需要管理

Transport Demand Managementの略で、交通需要管理または交通需要マネージメントと呼ばれる。増え続ける交通需要に対して、施設を増強してもすぐに飽和状態となるため、需要自体をコントロールして対処しようという考えから生まれた概念である。通常、TDMは複数の施策を組み合わせて実施される。これがTDMである、という定形はなく都市や国など条件に応じて行われる。TDMの主な政策メニューには、ロードプライシング、自動車相乗り優先、公共交通優先、オフピーク通勤などがあげられる。

都心の自動車規制

欧米では都心に乗り入れる自動車の量を減らすために様々な施策がとられる。トラム導入時に道路容量が減少するため、自動車規制を同時に行わなければならない。歩行者専用ゾーンやトランジットモール以外の施策とすれば以下のものがある。まず、地元の住民以外の自動車乗り入れを禁止するトラフィック=セルシステムがある。これは街区を細かく区切り、街区へは許可証を持った自動車しか進入できないというもの。次に、ゾーン30。これは道路に30km/hの制限をかけるというもので、自動車はゆっくりと走らなければならないので、通過交通を外周道路に誘導できるし、歩行者も安全となる。さらに、一方通行化や右折禁止などを取り入れ、都心での自動車利用を規制する。つまり、都心では自動車の速度を低下させ、そこに用事がない限りは自動車で都心に行かないように誘導するのである。

パークアンドライド
Park & Ride

郊外部の鉄道駅・LRT停留所、バスターミナルなどに公共交通利用者用の駐車場を設置し、自動車利用者はその駐車場にクルマを止めて公共交通に乗り換えて都心に向かうようにする方式。パーク&ライド実施の際には経済的な誘導手段がとられる。まずパーク&ライド利用は格安にする(通常は乗車券込みの駐車券を発行する)。その上で都心の駐車場は割高にする。自動車利用者にとっても、都心の渋滞から解放されて所要時間も短縮されるし、駐車場待ちの時間節約にもなるというメリットがある。

ロードプライシング
Road Pricing

都市への自動車流入、特に通過交通となる自動車を減らすために、都心部のエリアへの自動車乗り入れに課金する制度。学術上は、混雑料金(Congestion Cahrge)、混雑税(Congestion Tax)という用語も使われる。また 混雑する時間帯のみ課金する制度を、ピークロードプラシング(Peak Load Pricing)と言う。 都心へ乗り入れる自動車は料金を支払わなければならない。
 ロードプライシングは大きく分けて二種類ある。第一は、クルマを減らす手段として使うもので、ロンドンやシンガポールがこのタイプである。第二は、税収を確保するための手段としてつかうもので、ロードプライシング収入をバイパス道路や地下鉄・LRTの整備にあてるものである。北欧ではこのタイプである。前者はクルマを減らすのが目的なので、税額は高めとなり自動車利用者が減るので税収はあまり期待できない。後者は税収を得るのが目的なので、税率は低めに設定し、多くの人が支払うようにして税収を確保する。つまり、クルマを減らす効果と税収の間にトレードオフが生じる。
 交通工学や交通経済学の学者の間では非常に人気があるテーマであり、都市交通政策の理想とされる。実際に導入するとなると、住民合意を得るのが難しい上に課金の設備投資が高いため、非常に導入が困難であり、世界中の交通学者が論文を書いて提言している割には導入事例は少なく、マニアックでマイナーな施策となっている。

TOD 公共交通指向型開発

いくら公共交通利用優先と言っても、公共交通が通っていないと利用できない。そこで、団地や大規模公共施設の開発計画と公共交通計画を統合する形で、団地や公共施設は公共交通とセットで開発しようという形態の開発が始まった。これを公共交通指向型開発(TOD、Transit Oriented Development)と言う。日本では、大都市圏の大手私鉄資本の沿線開発はこのタイプの開発であったと言える。しかし、日本の地方圏では役所やホール、公営病院や福祉施設などの公共施設は概して鉄道駅やバス路線から離れたところに作られる傾向があり、クルマでしかアクセスできない施設が増えている。

パブリック・インボルブメント
Pblic Involvement

公共計画決定の意思形成過程において、行政が住民の意見を取り入れながら合意形成をはかる手法。広報や協議を繰り返し、住民に事業への理解・啓発をはかってゆく。行政が住民に説明するだけでなく、住民の意見に耳を傾けることがプロセスの重要な段階であると認識されている。

住民投票

公共計画決定を住民の直接投票によって決定する手法。アメリカのLRT建設においては住民投票で可決されなければならない。住民投票の採用は国によって異なり、フランスではあまり使われない。

コンセルタシオン

事前協議。フランスにおいては、公共事業計画が持ち上がった際、まず行政は住民と協議し、意見を聞いて計画に反映させなければならないと法律で定められている。コンセルタシオンは住民からの意見徴収の機会であるとともに、行政による事業の周知徹底手段でもある。特に反対者が多い場合は、コンセルタシオンで徹底的に協議する。激しい反対に見舞われたストラスブールのトラム建設においては、コンセルタシオンを合計500回実施した。

公的審査
公益利用宣言

公的審査とは、フランスにおける公共事業の実施のための最終審査である。行政裁判所によって指名された中立の委員が住民から意見を徴収し、行政に対して勧告書を作成する。地方議会は勧告書にしたがって計画を承認する。公的審査を経ないと計画は承認されない。公的審査後に、議会で公益利用宣言が出されると事業を開始する。公益利用宣言が出されると、行政は事業に必要な土地を優先的に、事業計画決定前の地価で購入できる。フランスは、計画を決めるまでは住民の権利を絶対的に優先して長い時間をかけて協議を行うが、一度計画が決定すると公共事業を絶対優先で一気に事業を進めるのである。

補助金

欧米では都市交通は赤字であり、税金を使って運行するのが普通となっている。公共交通は、自動車を利用できない層(特に年少者や高齢者、身体障害者)の足の確保、自動車利用の減少(による自動車起源諸問題の解決)という理由から、公共性があると見なされ、税金が使われているのである。補助金の財源形態は都市や国によって様々である。アメリカでは、地方売上税に交通補助金分を上乗せする形で財源としている。この売上税への上乗せは住民投票によって可決される。フランスでは、自治体が域内の企業に対して従業員の給料に応じて課税する交通負担金が主要な財源となっている。ドイツでは一般財源の他、市営電力事業の黒字分を交通の赤字補填に充てているケースがある。

交通負担金制度

フランスの都市交通財源制度。都市圏域内の従業員数十人以上の企業から、従業員の給料を課税ベースとして税金を徴収し、市町村の公共交通の財源とする制度。税率は地方都市圏の軌道保有都市が1.75%、バスのみだと1%(人口が少ないと0.5%)、パリ圏は約2.2%である。かなりの額の税金であり、フランスのトラム復活ブームを支える重要な制度の一つ。なお、交通負担金は市町村に代わってURSAFF(社会保険料・家族手当金徴収組合、フランスの社会保険庁にあたる)が徴収する。URSAFFの保険料徴収は世界一厳しいので、社会保険料未納のために路面電車が廃線の危機になるということはないのであしからず。

コンセッション方式
公役務特許方式

フランスの公共交通運営方式。フランスの都市交通は自治体が運行権と運行責任を持っている。入札によって選ばれた民間業者に30年契約で公共交通運営権を譲渡する方式がコンセッション方式である。かつてコンセッションで選ばれた事業者は独立採算で運営していたが、近年では赤字が出るので、契約時に予め補助金金額を決めておく方式になっている。
岐阜への参入表明したコネックス社は、フランスのコンセッション方式の請負会社最大手である。

上下分離方式

軌道系交通事業において、建設と経営が別の主体で行う方式。インフラ部分を公的機関または第三セクターが担当する場合が多い。また、完成後のインフラを運営事業者とは別の主体(公的機関)が持つこともある。

PFI
Private Finance Initiative

イギリスで編み出された民間資金主導の公益事業実施手法。日本の第3セクター方式とフランスのコンセッション方式を混ぜ合わせた手法である。日本では、民間資金のみ投入と誤解されているが、PFIには公的資金投入のタイプもある。基本的にPFIは、1)第3セクター企業を設立するジョイントベンチャー形、2)入札した事業者が独立採算で運営する独立採算形、3)基本的に入札した事業者が事業を行うが、行政からの補助金交付を伴うサービス購入形の3種類がある。

交通計画
LTP【英】
PDU【仏】

ヨーロッパの自治体は、国の法律によって地域内の交通計画を策定しなければならない、というケースが多い。これらの交通計画では、1,自動車利用規制と公共交通強化、2,環境保全、3,社会的弱者の足の確保、4,住宅開発などの土地利用計画との一体化などが目標となっている。イギリスの地域交通計画(LTP)、フランスの都市圏交通計画(PDU)などがその代表である。

交通権

モータリゼーションの進展によって、交通にアクセスできない層が現出された状態に対してアンチテーゼとして示された権利概念。人間が衣食住を行うには、必ず何らかの移動行為(交通行動)が必要であり、交通にアクセスする権利は基本的人権に基づく権利である、という考え方に基づく。特に交通権という考え方は、年少者、高齢者、身体障害者、低所得者と言ったマイノリティー保護の考えと不可分の関係である。この交通権の概念を法制度化したケースとしては、1982年に制定されたフランスの交通基本法(LOTI)が有名である。
 交通権の制度化は二種類のパターンがある。第一は、障害者の権利保障を交通政策に適用したもので、アメリカが典型である。第二は、経済的格差を解消する手段として公共交通サービスをナショナルミニマムとみなす考え方で、フランス交通基本法の交通権はこちらの考え方である。いずれの交通権の考え方にせよ、トラム(LRT)にバリアフリーを求めるようになり、今の世界的なLRTルネサンスに繋がったと言えよう。

このページ先頭へ戻る


| トラム・LRT用語集目次/索引 |

<<用語集1 基本編へ  <用語集2 車両編 | 



Homepage
Copylight (c)Soichiro Minami 2003-2012 All Rights Reserved
このページの無断転載を禁じます




|作成:2003年7月28日、最終更新2012年3月18日|


"Le Tram"日本語版ホームトラム・LRT用語集目次/索引>用語集3,施設・施策編(このページ)