ガロンヌ川にかかるピエール橋を渡るトラム。架線がないのですっきりしています(2004/1/5)。 |
ボルドーはもちろんフランスを代表する赤ワインの産地として有名であり、フランス南西部アキテーヌ地方の中心都市で都市圏人口65万人を数える主要都市です。大都市でありながら、軌道系交通機関の整備は遅れていました。当初はボルドーはリールやトゥールーズで採用されているVAL(地下式新交通システム)の導入を予定していました。しかし、諸般の事情で不可能となったようです。そこで、1997年にトラムを導入することを決定しました。工事は街中で遺跡が発見されるなどして難航していましたが、2003年末に開業にこぎ着けました。ボルドーのトラムは2003年12月21日に開業しました。第一フェイズのうち、A系統が開業し、2004年七月に残りの路線も完成し、さらに2005年秋にA線が延長され、現在は第二フェーズの路線がすべて開業し、3系統(実質4系統)44kmの路線網となりました。2009年は、年間5,390万人の利用があり、距離・乗客数共に広島電鉄と同規模に成長しました。
フランスのトラムと言えば、一都市一革命を起こすくらい新機軸の導入に積極的ですが、ここボルドーでも画期的な新機軸を採用しました。それは、架線を使わず第三軌条で集電する方式です。ストラスブールのトラム以降、トラムをアーバンデザインの手法として活用するのが一般的になりました。しかしながら、そのトラムにも景観面で大きな欠点がありました。それは、軌道の頭上を覆う架線です。ボルドーのトラムは街の顔とも言えるカテドラル(大聖堂)の真横を通ることもあり、特に景観面での配慮を求められていましたので、画期的な架線なしの集電方式を採用しました。この方式は、軌道中央に8mごとにセグメントで区切った第三軌条のレールを敷設し、電車の真下のセクションのみ通電する仕組みとなっています。トラムで第三軌条を採用するのは戦前のロンドンやワシントンでも見られましたが、保守が面倒なこともあり長続きしませんでした。近年のLRT復活でもなかなか実用化されず、今回のボルドーでようやく採用ました。ボルドーでは都心部では新方式の第三軌条集電(路面給電システム、APS)を使用し、郊外部では架線による通常の集電方式を採用しています(トラム用の第三軌条方式はコストが高いために、全線での採用を避けたため)。ちなみに、1950年代までボルドーに走っていた路面電車は、地中溝の第三軌条集電を採用していました<→架線なし集電システムについては特集3も参照>。
2004年夏頃はAPS不具合によるトラブルが多発して定時運行がほとんどできない状況でしたが、2006年現在、改良の甲斐あって定時運行率は大幅に改善しています。APSは、2011年に開業したアンジェ、ランスでも採用されています。
その後ボルドーのトラムは順調に路線を延ばし、乗客数も増加していきました。2016年現在、ボルドーのトラムは路線延長・乗客数ともフランスの地方都市で第1位を誇っております。ボルドーのトラムも、大成功したLRT事例と言えるまでに成長したのです。
運行担当事業者 | ボルドー都市圏連合トラム・バス (KEOLISグループ) Tram et Bus de la CUB(TBC) |
系統数 | 4系統(表記上は3系統だが、A系統が二股に分かれている) |
路線延長 | 43.9km(A系統:20.6km、B系統:15.2km、C系統:8.1km) |
停留所数 | 93(乗換駅重複含まず) 【A系統:41、B系統:38、C系統:17】 |
軌間 | 1435mm |
集電方式 | 直流750V架空単線式 直流750V路面給電方式(APS)方式の併用 |
車両数 | 74編成(7連接車:62本、5連接車:12本) |
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|作成:2004年1月9日、最終更新2016年12月10日|
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