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トラム/LRT用語集
2,車両編


【車両基礎用語編】

路面電車/トラムTram

路面電車、トラムとは、走っている車両のことも指す名称である。英語ではStreetcar(路面電車)。日本語では単に電車という場合もある。英語圏ではトラムは古くさいという理由で、LRVを使用する。仏独ベネルクスなどでは相変わらずトラムを使用している。

LRV(Light Rail Vehicle)

Light Rail Vehicleの略。意味は軽鉄道車両のこと。新しい路面電車の車両のことをこう呼ぶ。日本では軽快電車という名称もある(あまり一般的でない)。制御装置をチョッパ式やVVVF式など最新のものにしているものを主に指す。他の用語ではスーパートラム(英・シェフィールド)などもある。日本では、低床車をLRVの定義としているところもあるが、世界では地下鉄や鉄道線直通のために高床式としたLRVも数多く存在する。

超低床車
ノンステップ車

トラムは路面から乗降できるのはいいのだが、床が高く段差があり、高齢者や障害者には利用しにくい。そのため、床を低くして段差をなくしたトラムが開発された。床高さを30cmにすれば、停留所と同じ高さになり、段差はなくなる。だが、その床高だと、床面が車軸よりも低くなるので、一番最初は台車(車輪)のない部分のみ低くして車内に段差をつける方式が採用された。徐々に床面積を広げて行き、1994年前後に特殊な台車を開発して車内の床すべての低床化に成功した。100%低床車の他、コストなどから部分低床車も引き続き生産されている。

部分低床車

ノンステップ車のうち、車内の一部分だけを低床構造としたもの。低床部分の面積で、何%低床車と呼ばれる。部分低床車では車内に段差かスロープを もうけなければならない。台車付近の低床化は技術的に難しいので、ドア付近のみ低床にしたことが始まりである。台車を最初に低床化したのは1987年に登場したフランスのグルノーブルの電車である。この時は、モーターのある台車は低床化できなかったので、モーターのない台車のみ低床化した。100%低床車が普及した今でもコスト面などから部分低床車の人気は高い。また、ゲージや車体強度の関係で部分低床車を採用する都市や国も数多い。

完全低床車(100%低床車)

低床車の技術を進歩させて、客室の床すべてを低床にした電車である。モーターを含む駆動台車から車軸をなくす技術を採用する必要があり、開発に時間がかかった。100%低床車はバリアフリーにはよいのだが、車両コストが高く、しかも機構が精密なのでメンテナンスの手間もかかる。現在100%低床車はボンバルディア、シーメンス、アルストムの3社が特許を持っており、基本的にこの3社でしか作られない。

単車

二輪車のことではない。一両で完結する路面電車のことである。日本の単車は両方に運転台がついているが、終点がループになっている東欧の電車は単車でも運転台が片方にしかない。車輪が二軸のものを二軸単車、台車を取り付けたものをボギー車という。路面電車は道路を走る関係上、車長が15mくらいに制限されているため、高い輸送力を持たせようと思えば連結運転または連接車を採用する。

連結車

輸送力を高めるために二両以上の電車を連結したもの。運転台があるなしに関わらず、各車両はボギー又は二軸単車で独立して線路上を走れる車両である。連結車には3つの形態がある。まず単車を二両以上連結したタイプ。需要に応じて車両を増減する。つぎに登場したのは親子電車である。ずべての車両にモーターをつける必要がないので、モーターのない付随車(ダミーカー)を増結する形である。最後は、地下鉄や普通の電車同様、始めから連結運転を前提に2〜4両の編成を組むタイプである。長編成になると連接車の採用が一般的である。日本で一番長い路面電車、京阪京津線800系は四両編成の連結車である。

連接車

複数の車体から構成され、一つの台車(車輪)を複数の車体で共用する方式。編成全体で車輪の数を減らすことが出来、カーブにも強いが、車体単位での切り離しが面倒という欠点を持つ。路面電車では連結運転よりも連接車の方が一般的である。当初は2つの車体で一つのボギー台車がある構造が一般的であったが、超低床車の登場に伴いフローティング構造という車両も現れた。これは、台車のあるユニットで台車のないユニットを挟んで支える方式である。通常のボギー台車では床面処理できない超低床車ならではの方法である。

更新車

電車の車体は20-30年で腐食して寿命が来ることが多い。一方で、台車やモーター、制御装置など走行部分はその倍くらいの寿命を持っている。そこで、車両を置き換えるにあたり、車体だけ作って載せ替える方式を採用することができる。この、車体のみ載せ替えた車両のことを更新車(車体更新車)と言う。車体更新車は安く車両を新造できるが、旧型の吊り掛けモーターではエネルギー効率も悪いし、騒音もある。超低床にもしにくい、という欠点はある。と言えども、お金のない日本の地方の路面電車にとっては安く新造できるメリットは捨てがたく、今でも更新車は結構作られている。

オーダーメイド生産方式

電車を作る際に、鉄道事業者側主導で設計を行い、車両メーカーに発注する方式。それぞれの鉄道会社のニーズに合った車両設計ができるのはよいが、車両設計にコストがかかる。また、小規模な事業者では車両設計能力がないために、車両メーカーの設計陣が代わって設計する。近年は日本の鉄道会社でもコスト面からレィディメイド方式に移行しつつある。

レィディメイド生産方式

車両メーカーが予め車両を設計して、鉄道会社はカタログを見て車両を発注する方式。発注者はオプションや部品の組み合わせを選んで発注する。コスト面ではオーダーメイド方式より有利だが、大量に製造しないと収益が見込めない。また、鉄道会社のニーズにあった車両でないと作っても売れない。ヨーロッパのノンステップのLRVはすべてレィディメイド方式で製造されている。

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【車両部品・技術編】

トロリーポール

集電方式の一つ。ポールとも言う。鉄の棒の先に、架線と接触するホイールまたはスライダを取り付けて集電する方式。トラムの他、トロリーバスにも使われる。ポールがはずれやすく、なおかつ終点でポールの方向を変えなければならないという欠点がある。現在ではトラムで採用されるケースはなく、保存用などの旧型車で見ることができるくらいである。+−2本の架線を張る方式はトロリーポールでしか使用できず、トロリーバスはトロリーポールしか利用できない。現在ではトロリーバスの他、ナンシーのゴムトラムでも採用されている。

パンタグラフ

集電方式の一つ。菱形やZ型の集電装置によって架線から電気を取り込む方式。架線との接触部分は幅広のシューで行うために離線が大幅に減少し、安定した集電性能が期待できる。通常の鉄道、トラム双方で利用される。パンタグラフを使用する場合は、架線を1本しか張ることができない。そのため、架線は+とし、−は線路を帰電線に利用する(地面がアースの役割を果たす)。線路の存在しないトロリーバスではパンタグラフは利用できない。

第三軌条集電方式

集電方式の一つ。線路の脇又は中央に集電用のレールを設置して、台車に取り付けられた集電靴(コレクターシュー)から電気を取り入れる方式。架線が必要なく、景観面で有利なのだが、感電の危険性があるために踏切の設置は困難になる。架線がない分トンネル断面積を小さくできるので地下鉄に採用されるケースが多い。
ニューヨーク、ワシントンでは景観面から路面電車で第三軌条を使った。そのままでは感電の危険があるので、軌道中央に溝を掘り、溝の中に第三軌条を設置、車体から長く伸びたコレクターシューで集電する方式をとっていた。この方式は保守が大変なので長続きしなかった。

路面給電方式
(地表集電方式)
APS(Alimentation Par le Sol)

景観保護のために、フランスで開発された集電方式。路面中央に8mごとにセグメントで区切った第三軌条を設置、リレーボックスで電車の通過を検知し、電車が通過しているセグメントのみに電気を流す方式。フランスのボルドーのトラムで初めて採用された。景観保護としては完璧なのだが、通常の方式に比べて三倍のコストがかかる。導入当初は初期不良に悩まされていたが、現在ではそれも克服し、ランスやアンジェなど採用例が増えた。

抵抗制御方式

電車の速度を制御する方式の一つ。回路を組み替えて経由する抵抗の数を変化させることにより電圧を変化させて速度制御を行う方式。構造が単純で扱いやすいが、抵抗を通すのでエネルギー効率はよくない方式である。従来の電車はすべてこの方式であったが、チョッパ制御やVVVF制御に置き換えられた。

チョッパ制御方式

省エネのために開発された制御方式。サイリスタチョッパ制御、または電機子チョッパ制御とも呼ばれる。高速で電流をオン・オフを繰り返す(これをチョッピングという)ことにより、電圧を制御する方式。大容量の電流をチョッピングする制御機が必要である。サイリスタを利用したチョッパ装置開発により初めて実現した。トラムでも、日本の軽快電車やフランスのグルノーブルのノンステップ車でこのチョッパ制御方式が採用された。チョッパ装置のコストが高く、なおかつ直流モーターのブラシ摩耗の問題もあるので、現在ではVVVF制御方式に移行した。

VVVFインバーター制御方式

交流誘導電動機とインバーター装置を利用して電車の駆動・制御を行う方式。従来の抵抗制御方式に比べて40%近い省エネが実現するため、現在ではトラムを始め、地下鉄・JR・大手私鉄から新幹線でも採用されている方式である。ちなみに日本の鉄道で最初にこのVVVFを採用したのは、熊本市電である。交流誘導電動機は、ブラシがないので摩耗部品がほとんど無く、メンテナンスが楽というメリットがある。現在、世界のほとんどのトラムの新造車はVVVF制御である。

モーター/電動機

電車用の直流モーターも、基本構造は模型用としておなじみのマブチモーターと構造は同じである。マブチモーターでは、回転する部分(電機子)のみが電磁石で、周りは永久磁石であるが、電車用の大型モーターでは周りの部分も電磁石である(これを界磁という)。直流モーターでは、電機子の接点にブラシという部品(電機子に電流を供給する部品)があり、これの摩耗が問題となる。このメンテナンスの問題から、ブラシのない交流誘導電動機(電機子の部分に電流を流さなくても、界磁の磁力から電機子に電流が発生する)を利用するVVVF方式が開発されたのである。

吊掛駆動方式

モーターの回転を車軸に伝える方式の一つで、一番古い方式。モータを車軸に吊り掛け、大小の歯車のみで車軸に回転を伝える方式。モーターの重量が車軸にかかり、騒音、振動が激しいという欠点を持つ。そのため通常の鉄道では使われなくなった。構造が単純で保守しやすいし、路面電車は低速なので騒音・振動が普通の鉄道ほど深刻ではないため、日本の路面電車では半数が吊り掛け式である。

カルダン駆動方式

駆動方式の一つ。モーターを台車に取り付け、撓み継ぎ手を使って車軸へ駆動する方式。車軸にかかる重量が少なくなり、騒音・振動も減り、高速運転にも向く。現在ではスタンダードな方式である。アメリカ路面電車の起死回生として導入されたPCCカーによって開発されたシステムである。

バッテリートラム

充電池(バッテリー)を搭載し、非電化区間を走行できるようにしたのがバッテリートラムである。トラムに使われるバッテリーは、ニッケル水素電池とリチウムイオン電池の二種類がある。リチウムイオン電池の方が先進的な技術だが、まだ技術的に未完成のところもあり、商業ベースではニッケル水素電池の方が安定している。景観保護のため、フランスのニースでは一部区間を架線無しとして、ニッケル水素バッテリーで走行する。また、日本でも川崎重工のSWIMO(ニッケル水素)、鉄道総研のHi-Tram(リチウムイオン)という試験車がある。トロリーバスや電気バスでは、バッテリー走行も多い。

キャパシタ
コンデンサ

バッテリーと並ぶ、非電化区間の給電装置として注目されているのが、キャパシタ(コンデンサ)である。キャパシタは、急速充電・急速放電の性質を持つため、停留所のみに給電設備を設けて駅間は架線レスで走行するトラムの路線設定には、バッテリーよりこちらの方が合うという意見もある。中国の上海で、キャパシタによる電気バスの走行が行われている。

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【車種編】

PCCカー

モータリゼーションにより路面電車が危機に瀕した戦前のアメリカで、路面電車の起死回生の切り札として開発された車両。カルダン駆動を開発し、騒音・振動をなくし、高速性能を高めた路面電車である。結局のところ、渋滞により軌道をふさがれた路面電車ではPCCカーも性能を発揮することはできず、アメリカの路面電車は衰退の運命をたどることになる。と言えども、PCCカーで開発されたカルダン駆動は高速鉄道に採用されて、スタンダードとなった。新幹線を始めとする世界中の電車は、PCCカーが無ければ今ほど発達はしていなかったであろう。なお、PCCカーの技術はベルギーに引き継がれ、現在でもブリュッセルのトラムはほとんどがこのPCCカーである。

デュワグカー
Duwag Car

ドイツ・デュッセルドルフにあるデュワグ社で開発された連接式の路面電車。他の国とは異なって、路面電車存続を選んだ西ドイツが路面電車近代化のために開発した車両である。2連接または3連接の車体で、路面電車1編成あたりの輸送力を高め、近代化に貢献した。車体は丸みを帯びており、日本でユーロピアンスタイルの路面電車と言えばこのデュワグカーのことであろう。バリアフリーの流れと老朽化により、各都市で低床車に置き換えられて引退が進んでいる。現在の低床車にいたる流れを作った意味で、功績は計り知れなく大きい。

タトラカー
Tatra Car

共産主義時代の東欧圏の路面電車標準車。現在もトラックのメーカーとして名高いチェコのタトラ社で製造された路面電車である。コメコンによる計画経済で、東欧の路面電車はタトラ社で集中生産されて各国に分配された。丸みを帯びた単車であり、連接車に比べて見劣りする。と言っても足回りはカルダン駆動でトラックブレーキも装備しており、古ぼけた電車に見えて日本の更新車に比べて性能はずっと上である。旧東ドイツでは引退が進んでいるが、プラハなど旧東欧圏の都市では健在。

無音電車
和製PCCカー

1950年代に作られた日本の路面電車黄金期最後の華とも言える高性能車たちのこと。PCCカー同様に電車の性能を上げてクルマに対抗しようとした電車である。東京都電は、アメリカのPCCカーのライセンスを購入して5500形電車を登場させた。横浜、名古屋、大阪、神戸では独自開発によるカルダン式の電車が製造された。大阪市電や名古屋市電の高性能車は、走行音がないと言ってもいいくらいに改善され、無音電車と呼ばれた。だが、道路をクルマに塞がれては折角の高性能も発揮できず、力尽きた。これらの高性能車は、メンテの手間から地方都市の事業者に引き取られることはなく、ほとんどの電車が20年にも満たない生涯を閉じた。

軽快電車

欧米でのLRV開発に刺激されて、日本での路面電車復権を目指して鉄道技術協会が1980年に開発した電車。単車形の長崎電軌軌道2000形二両、三連接車の広島電鉄3500形一本が製作された。当時最新の省エネ技術であったチョッパ制御を採用して登場。しかし、軽快電車はこの三本のみしか作られなかった。その理由は、二年後の1982年に熊本市電に日本初のVVVF車が登場し、以後チョッパ制御からVVVF制御に主力が移ったためである。

GT

GTの名前がつく車種は多いのだが、ここでは熊本にも導入されたドイツ標準仕様のノンステップ車のことである。GTは二軸単車状の車体を2〜3連接にした構造をしており、台車は片側モーター架装で床下の継ぎ手で反対側に駆動を伝える。ベルリン、ミュンヘン、ブレーメンなどで導入されている。日本最初のノンステップ車となった熊本の電車はこのモデルである。そのほか、岡山、高岡、富山港線に導入されている。現在はボンバルディア社が製造している。

コンビーノ Combino

ドイツ・シーメンス/デュワググループの100%低床車。駆動台車はギアボックス一体型のモーターを左右それぞれの車輪に装備する方式。左右の車輪は独立して駆動する。駆動ユニットと台車のないユニットから構成されるフローティング構造で3〜7連接自由に構成できる。フライブルク、ウルム、バーゼル、アムステルダムなどで採用されており、日本にもグリーンムーバーという名前で広島に導入された。

ユーロートラム Eurotram

本来はストラスブールのトラムの電車の愛称だが、ボンバルディア社で製造される同型車の名称。ストラスブールが欧州議会を始め、EUや欧州の国際機関が集中していることからつけられた名称である。小型車輪を使った台車ユニットと大きめの客室ユニットから構成されるフローティング構造で、7連接と9連接が存在する。低床車の中で最も床面積が広く、またカーブでのオーバーハングも少ない。幅広ドアにより乗降促進の面でも有利である。欠点は短くできないことである。ストラスブール以外にも、ミラノとポルトで採用されている。日本では一番人気が高いモデル。
余談ながら、このユーロトラムほど製造元が変化した電車も珍しい。まず当初はイタリア・ソシミ社によって開発されたが、同社の倒産によりドイツABB社に引き継がれ、ストラスブールでデビューした。ABBは合併により、ADトランツに吸収されて、ADトランツで作られるようになった。だが、さらにADトランツの鉄道製造部門のボンバルディア社への売却により、現在はボンバルディア社で製造されている。

Citadis

フランス・アルストム社の製造するLRV。この手のモデルとしては珍しく70%低床車と100%低床車の2種類がある。Citadisでは前面パーツをどんな形状にも対応できるようにしているのが特徴である。これはフランスの路面電車導入では車体デザインが非常に重要視されており、各市のデザイン戦略に対応できるようにした結果である。今のフランスでは事実上の標準車であるほか、スペインのバルセロナででも採用された。  
 部分低床車が3連接30m級が301系、5連接40m級が401系を名乗る。多数派の100%低床車は、5連接33m車が302系、7連接43m車が402系、ストラスブール専用の7連接45m車が403系である。22m三連接のCitadis Compactもカタログの中に入っている。派生形式として、鉄道線の各停用車両のRegio Citadis、トラム=トレイン用のCitadis Dualisがある。  
 2013年、総合車両製作所とアルストムが提携してLRV導入をすることが報道発表された。そのため、この車種も日本で導入される可能性が生じた。

TFS型電車

 TFSとはTramway Français Standardの略で、フランス標準トラムという意味。フランス語読みすれば、テーエフエスになる。軌道系公共交通の再生と拡充を決めたフランス政府が、1980年代に音頭をとって開発させた、いわばフランス版軽快電車というべき存在。GEC-アルストム(現在アルストム社)によって開発された。日本でいえば、グルノーブル型として知られる世界初の70%低床車もTFSの一種である。グルノーブル型、ナント型、サンテティエンヌ型の三種類がある。ナント型(Tan300系電車)は1984年につくられた2連接の高床車で、この電車がフランスのLRTルネサンスの先駆けとなった。後に、低床の中間ユニットを挟んで三連接となり、バリアフリー化に対応した。グルノーブル型(Tag2000系、RATP101系、RATP201系、TCAR800系)は、30m3連接70%低床車となった。サンテティエンヌ型(STAS901系)は唯一のメーターゲージ車で、23m三連接・2.1mの狭幅車体を持つ部分低床車である。TFS型は電機子チョッパ制御を採用しており、走行台車は通常の車軸有りのボギー台車である。基本設計が古くなったこともあり、21世紀にはいって後継のCitadisに道を譲ってカタログ落ちした。フランスのLRTの草創期を支え、世界中の電車・バスの床を低くした歴史的な功績のある車種である。とくに、フランス交通基本法(1982年成立)に謳われた交通権の保障を裏付けた立役者といえる電車である。

インチェントロ

あまり日の目を見なかった不運なLRV。ABBとAEGが合併してできたメーカー、ADトランツの標準モデルとして開発された100%低床車。開発当初のインチェントロは明るい未来が保証されていたと言ってもよかった。しかし、ADトランツのボンバルディア合併で運命は急転する。ボンバルディアはインチェントロよりもユーロトラムやGT形の方を重視するようになった。日陰に追いやられたと言っても、フランスのナントとイギリスのノッティンガムで採用されている。また、日本のMOMO以降のGTは、インチェントロの車体構造を採用している。

Flexity

ボンバルディア社のLRVの総称。超低床車か部分低床か、鉄道線直通かでいくつかのバリエーションに別れる。ユーロトラムやらトラム=トレインやらGT系やらADトランツ引き継ぎ・ボンバルディア開発全部混ざっており、Flexityシリーズ通じた共通性はない。
 近年ブランド整理が行われ、Flexity Tram(市内線LRVの総称、OutlookとClassicを統合)、Flexity Tram 2(次世代市内線LRV)、Flexity Freedom(次世代アメリカ向け100%低床車)、Flexity Light Rail Vehicle(トラム=トレイン用、シュタッドバーン向け部分低床車、SwiftとLinkを統合)の四種類に分けられた。※ややこしいが、ボンバルディア社はFlexityすべてを「Tram & LRV」として総称しており、「Flexity Light Rail Vehicle」だけがLRVというわけではない。Flexity Tram 2は、「ボンバルディ社のLRV車種、Flexity Tram 2」と公式サイトでは案内されいる。

AVANTO

シーメンスが開発したトラム=トレイン用の車両の総称である。アメリカやドイツ、フランスなどで採用されている。フランスのトラムでは、シーメンスが初採用となったのがAVANTOでパリとミュルーズで導入された。フランスのトラムトレインに導入されたのは、5連接37mの車体を持つ部分低床車である。交直流両用車で、最高速度は100km/h。

Tango

スイスのスタドラー社が製造する部分低床車。後発のスイスメーカーなので、100%低床ではなく部分低床車となっている。逆に、部分低床車としたことで高速化が容易だったという面もある。バーゼル市電へ乗り入れる私鉄のBLT線、ジュネーブのトラムで採用されており、これらは最高速度は80km/hとなっている。リヨン空港線ローヌエクスプレスにも採用され、こちらは最高速度100km/hである。

Urdos

スペインのCAF社が製造するLRVの車種。Urdos 1としてビルバオのトラムに導入された。CAF社が、トラム(LRV)でビッグスリー寡占状態になった低床車の市場に 殴り込みをかけるべく開発したのがこのUrdosである。本家スペインで採用実績を積んだ後、第三世代のUrdos 3の3連接24m車を一編成約1億8000万円というバーゲン価格でフランス・ブサンソン市に売り込むことに成功した。スペインは鉄道技術レベルがもともと高い国で、フランスやドイツに比べてやや人件費も安いこともあり、欧州の低床車市場での勝機を見いだした。国際的なLRV市場に切り込むには、このUrdosやTraminoのように、大量生産の準備を行って、売り込みに行かないとダメである。なお、ブサンソンは最後までTranslohrにするか鉄輪にするか迷っていたので、実はこのUrdosこそトランスロールの天敵であると言える。

Tramino

ポーランドのSolaris社の100%低床車がトラミーノである。ソラリス社はバス製造メーカーとして、EUの中で最近勢力をつけている新興企業である。もともと、ドイツのネオプランやマンのポーランドにける提携会社であったが、21世紀前後に独立してソラリスとなった。なので、旧COMECON諸国の車両メーカーとの関係はなく、西ドイツ系の影響をうけて誕生したポーランドの新興企業である。 独自に車両を開発するノウハウを蓄積しており、高い技術力とポーランドの安い人件費を活かして、旧東欧系のメーカーが西側のメーカーに押される中、急成長している企業である。そのソラリス社がトラムの製造に乗り出して開発したのがこのトラミーノで、33m5連接車がソラリス社の拠点、ポーランドのポズナン市のトラムで採用された。なお、ソラリスの車種名は末尾が「-ino」が特徴で、都市型路線バスがUrbino、トロリーバスがTrollinoである

グリーンムーバー Green Mover

広島電鉄に導入されたノンステップ車5000形の愛称。シーメンスのコンビーノであり、最終組み立ては日本のアルナ車両が担当している。広電宮島線直通車は歴代ぐりーんらいなーを名乗っており、その一環での命名。広島にあわせて幅広車体にしており、欧州向け車両とは若干構造を変えている。

J-Tram

近畿車輛、三菱重工、東洋電機の三社が国から支援をうけて開発した日の丸100%低床車である。コンビーノの後釜として広島電鉄5100型Green Mover Maxとしてデビューした。要となる低床車の台車は、海外の特許に触れないように日本の独自技術を採用した。ドイツ型のままでは、日本のラッシュ輸送に不都合があったために、ロングシートの部分を増やすように機器構造を改善している。海外型ともタイマンをはれる堂々たる30m5連接車で、LRTの輸送能力の高さを示す車種だが、小型車に乗客を詰め込むのが好きな日本の”チンチン電車事業者”からは不人気で、広島電鉄以外に売れず、不遇をかこった車両となっている。 2013年、3連接18mバージョンが広島電鉄の市内線用に登場した。

リトルダンサー

日本のアルナ車両が開発したノンステップトラム。グルノーブル形やユーロトラムを参考にしながら、ややこしい車軸なし台車を使わずに超低床車としたもの。名称は、リトルな段差とダンサー(踊り手)をひっかけている。日本型LRVとしての意義はあるが、連接向けの設計をそのまま単車にしているために、単車タイプは客室面積が狭い。
 かわいい名前をつけているが、最初つくられた車種は「田舎の温泉場にいるおばはんストリップダンサー」みたいなデザインセンスの悪いブサイクな顔をしているものが多く、ヨーロッパのおしゃれなデザインの電車を期待していた沿線住民やファンを落胆させたものが多かった。だが、最近のモデルはデザインがはるかに向上してきており、内装に堺更紗を用いて和風テイストを出した堺トラム(阪堺電車)や大胆な近未来的デザインを採用したA1200形(札幌市電)のように、目の肥えた欧米人観光客が乗っても満足させられそうな電車もできている。
最近の16m三連接車体モデルは、小半径車輪を用い、車軸あり台車のまま低床化に成功している。車軸なし台車に比べて床面が高くなるデメリットを生じる反面、車軸付きのため劣悪な線路条件でも安定して走行できるというメリットがある。この車両は、16mしか車長がないのに一編成2億3000万円以上もする、世界的に見れば「高価な電車」である。ただし、町工場のノリで2年に一編成のペースでつくってくれるし、ローテクの固まりのような低床車も町工場レベルの整備水準で直せるため、路面電車の財政が旧COMECON諸国よりも劣悪な日本の路面電車業界の事情には適した車両である。いろいろな意味で、現在の日本の路面電車事業者に最適化された車種であるといえる。

MOMO

岡山電気軌道に導入されたドイツ製ノンステップ車の愛称。市民団体RACDAによって提案され、設計はJR九州の特急車で名高い水戸岡鋭治氏がボランティアで引き受けた。車両自体はGT形台車とインチェントロ車体の組み合わせ。内装は木材を多用している。愛称はもちろん岡山名産の桃にちなむ。

アイトラム AI-Tram

万葉線に導入されたノンステップ車。車両設計はMOMOと同様。こちらは地元名産の漆器にちなんで朱色。脱線事故が相次いで調子が悪い。車両に設計ミスがあるとか言われているが、それよりも走っている万葉線の軌道状態が悪すぎる。

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