Le Tramトップ>トラムとは?(このページ)

Homepage
トラム(LRT・路面電車)とは

このコーナーでは、トラムとはどんな乗り物なのか?ということを解説してゆきます

トラム−見直される身近な電車

 トラム(Tram/Tramway)とは、路面電車やLRTの事です。英語、フランス語、スペイン語、ドイツ語、イタリア語などなど様々な言語で、路面電車やLRTの事をTramと呼びます。世界中で最も身近で手軽な都市交通機関として、トラムは使われています。「路面電車」と言えば、少し前までは時代遅れの乗り物というイメージがありました。しかし、公害問題を契機にクリーンな乗り物としてトラムが見直され、最新技術を導入して地下鉄などの他の都市交通機関に勝るとも劣らない近代的な乗り物として欧米の多くの街で、どんどんトラムが復活しています。
 英語圏では、LRTという用語も呼称としてつかわれる事が多くなっていますが、ヨーロッパでは、西欧・中東欧問わず路面電車・LRTはすべてTramと呼ばれて親しまれています。

 トラムは基本的に道路の上を走ります。停留所が路上にあるので、乗り降りはすぐに出来、こまめに停留所が設置され、さほど歩かずに気軽に乗り降りができます。しかも、最新のトラムはバリアフリー化が進んでおり、身障者や高齢者も楽々乗降できる、人に優しい乗り物となっています。
 欧米の都心部では、トラムが走る道路を歩行者専用空間にして、まちの空間をひとと電車の空間として開放しています。このような道路はトランジットモールと呼ばれ、歩行者中心の街のシンボルとなっています。

 郊外部では、トラムの線路は道路と分離されて敷設されます。なので、電車は速く走ることができます。電車専用の軌道では、景観保護と騒音防止のために芝生軌道が採用されているケースもあります。

 トラムの電車も、最新技術を用いて、バリアフリー化・省エネ・低公害化を実現しています。特に、特殊な技術を用いて床を低くしてノンステップ化したLRTは、バリアフリーな公共交通の決定版として世界中の街で採用されています。また、デザインも斬新なものを採用し、トラムがまちのシンボルとなるようになっています。軌道や停留所も、電車に併せてデザインを行い、トラムがまちの新しい景観となるように工夫されているのも特徴です。

ドイツのブレーメンのトラム。 最新技術で架線を無くしたフランス、ボルドーのトラム。 芝生の上を走る、南仏モンペリエのトラム。

◆日本でもどんどん復活するトラム◆
日本初の本格LRTとして2006年に開業した富山ライトレール 純国産としては初の本格的ノンステップトラムとなった広島電鉄5100形。 市民の要望により存続した、高岡の万葉線。ドイツ製の新型車を投入して近代化。

いろいろなトラム

 トラムは、軌道系交通機関の中で最も安価に建設できる乗り物であり、しかも走る路線の条件に合わせて柔軟な設定が出来るのが特徴です。なので、様々な路線で幅広く採用されています。
 日本ではチンチン電車と言えば、車体が小さくて輸送力がないというイメージがありますが、欧米の最新のトラムでは、車長が40mに達する大容量形ものも珍しくありません。日本でも、広島電鉄の新型車両は、車長30mの輸送力の高い電車が使われています。

 

地方中核都市の主力交通機関

 トラムが最も力を発揮するのが、人口20万人〜100万人規模の都市圏での輸送です。これらの都市では、トラムがまちのメインの交通機関としてつかわれます。古くからトラムが存続していたドイツやオランダ、オーストリアおよび中東欧などの主要都市では、大規模なトラムのネットワークがあり、文字通り網の目のようにトラムの路線が町中に張り巡らされています。これらの都市では、トラムはまさに交通機関の主力として活躍しています。
 フランスやアメリカなど、一度路面電車を撤廃したところでも、トラムの復活が相次いでいます。トラム復活組の都市では、ドイツなどの存続組に比べれば路線網の規模は大きくありませんが、その代わりすべてが最新技術を用いて建設されているので、極めて近代的で快適な交通機関となっているのが特徴です。特に、フランスのトラムは都市の空間整備と一体になって導入されていることもあり、電車・停留所のデザインが非常に凝っていることで有名です。

 欧米のトラムは、バスや他の交通機関と一体となったネットワークで運用されているのが特徴です。切符を共通にして、1枚の乗車券で電車とバスを乗り継げるようになっています。バス路線の方も、電車と競合するのではなく、電車と相互に補完し合うように設定され、効率の良い便利なネットワークを形成するようになっています。

 こういった都市では、トラムはまさに街の顔として盛んにPRしているケースも少なくありません。少し前までは、地下鉄が街のステータスとなっていましたが、今ではトラムの導入こそがステータスとなり時代となりました。フランスのボルドーでは、採算面から地下鉄の導入を見送り、代わりに安価なトラムを導入。しかし今では、トラムはボルドーの顔となっています。

環境首都フライブルクのトラムは都市交通の主役。 フランス最大級の路線網を誇るナントのトラム。 スイス・バーゼル市の都市交通はトラムが主役。
旧西ドイツの首都だが小都市のボンでは、トラムとシュタッドバーンが主役。 シャンパーニュ地方の古都、ランスのトラム。架線レスシステムを採用。 スペイン、バスクの中心都市ビルバオのトラム。再開発地区を走る。

大都市圏でもどんどん導入

 地下鉄が走っていると、その街は大都市であるというイメージがあるように、大都市の交通需要を裁くには、輸送量の大きな地下鉄が不可欠です。では、トラムは大都市では役に立たないのでしょうか?実は、欧米では大都市でもトラムは積極的に導入されています。
 地下鉄は確かに輸送力が大きく大都市に適しているのですが、如何せん設備が大規模であり、きめ細やかな需要には対応しきれません。大都市といえども、さほど需要が大きくない路線や地区では、地下鉄では採算がとれず導入ができません。そこで、大都市でも地下鉄ほどの需要がない区間のために、トラムが活用されているのです。特に、郊外部の拠点同士を結ぶ外環状線の路線は、トラムやLRTに適しているとされ、多くの街で外環状線のトラムが見られます。代表的なのはフランスのパリであり、現在市境の外環状道路にトラム3号線を建設しています。パリは隣接市にすでに外環状のLRTが2本あり、これらのトラムをつないでパリの外周を大きく一周するトラムの計画が上がっています。パリの路線は、元はと言えば地下鉄の導入が検討されていた路線ですが、採算が合わないために凍結されていました。そこで、代わりにトラムで建設することにしたのです。

 ベルリン、ウィーン、アムステルダムなどのトラムが存続している大都市では、地下鉄ネットワークと並んでトラムのネットワークが存在しています。こういった大都市では、地下鉄だけではきめ細やかな路線設定に対応できないために、トラムが地下鉄のネットワークを補完するものとしてつかわれているのです。

ドイツの首都ベルリンのトラム。旧東ベルリン地区で稠密な路線網を持つ。 パリ市内に60年ぶりに帰ってきた、T3号線の電車。43メートルの長大編成です。 オランダの首都、アムステルダムではトラムが主役。中には地下鉄と乗り入れをする系統もある。
スペインもトラム復活に力を入れる。バルセロナにもトラムが帰ってきた。 フランス第2の都市、リヨンでも地下鉄の補完路線としてトラムを導入。 ベルギーの首都ブリュッセルは、トラムの一部区間を地下線にしたプレメトロ方式が有名。

鉄道線に乗り入れ

 トラムは、基本的に2本のレールと鉄の車輪で走るという鉄道システムそのもの。なので、鉄道線の設備がそのままつかわれます。廃線となった路線や貨物線を流用してトラムを作ったところも少なくありません。パリの2号線や富山ライトレールはこの手法で作られています。

 廃線だけではなく、現役の鉄道線に乗り入れる試みもなされています。高速列車が走る路線へのトラムの乗り入れはいろいろな困難があるのですが、技術開発によって高速運転可能なLRTを開発して鉄道線への乗り入れトラム(トラム=トレインと呼ばれます)を実現したところがでてきました。最初に実現したのはドイツのカールスルーエ市で、カールスルーエではドイツ版新幹線のICEと同じ路線をトラムが走る光景が見られます。
 トラム=トレインは、都心部へ通じるトラムと近郊鉄道が乗り入れることによって利便性

が強化されるだけではなく、比較的小単位で省エネのLRT車両でローカル列車を運行することによって効率の改善もはかるという一石二鳥の策となっています。

鉄道線乗り入れトラムの元祖、カールスルーエ。 ドイツ・ザールブリュッケンのLRTは鉄道線に乗り入れてフランスまで行く。 廃線跡を流用して建設された、パリの2号線。
富山ライトレールは、JRの路線をトラム化して誕生した。 郊外の鉄道線区間にトラムが直通、後に全便トラムになった広島電鉄宮島線。 パリの4号線も鉄道線を流用してトラム=トレイン化。国鉄が経営。

トラムの新しい仲間とパートナー

 トラムの仲間の都市交通として、トロリーバスが挙げられます。トロリーバスは、路面電車のように架線から電気をとって、モーターで走るバスのことで、無軌条電車ともよばれます。トラムに比べて安価であり、また勾配にも強いメリットがあります。路面電車同様、自動車に押されて衰退気味でしたが、安価でクリーンなメリットが見なされ、トロリーバスも復権しつつあります。連接形の車体も導入され、輸送力もアップしています。

 安価にきめ細やかな路線網を実現するのが、バスです。路線バス無しに、都市交通は成り立ちません。一方でバスは、渋滞に巻き込まれやすい、路線がわかりにくい、停留所施設が貧弱、バリアフリーに対応しない、という欠点を持ちます。バスがこのような欠点を持つが故にトラム(LRT)が渇望されるのですが、トラムは建設費がそれなりにかかるので、そうバカバカと路線を造るわけにはゆきません。そこで、バスの安価さとトラムの定時性や快適性を併せ持ったバスサービスの構築が模索されました。こうして誕生したのが、BRT(高速都市バスサービス、Bus Rapid Transsit)です。フランス語では、BHNS(Bus à Haut Niveau de Service、高レベルバスサービス)と呼びます。BRTは、専用レーンを持ち、屋根のついたトラム(LRT)なみの停留所施設を持ち、輸送力の高い連接バスで高レベルのサービスを提供し、定時性と頻繁運転、わかりやすい路線設定を特徴とします。言ってしまえば、「バスを使ったLRT」ということになります。BRTは、トラムを導入するほどの需要規模のない都市の基幹交通機関として導入されたり、あるいはトラムの支線的な路線として整備されることが多くなっています。ブラジルのクリチバ市がBRTの先進事例として高名で、フランスではナント、ルーアン、ラ=ロッシェルなどで導入されています。ナントのBRTは、トラム4号線の呼称を与えられており、案内上はバスではなく、軌道系交通機関と同格となります。リヨンでは、トロリーバスを使ったBRTサービス、Cristalis があります。

 このトロリーバスと、トラム(LRT)の長所を合わせた乗り物として開発されたのが、ゴムタイヤトラムです。ゴムタイヤトラムは、駆動輪はトロリーバスのようにゴムタイヤとし、案内用の1本の鉄のレールをつかって走るというもので、トラムの輸送力とトロリーバスの登坂能力を併せ持つ乗り物として開発されたものです。現在、フランスのカーンとナンシーでTVRというモデルのものが走っており、2006年10月にはよりLRT性能を強化したトランスロールが、クレルモン=フェランに開通しました。ゴムタイヤトラムは、主に丘陵地でのLRTの手段として注目されます。ただし、新技術故の不安定さが有り、一部の都市では深刻なトラブルを招いています。ゴムタイヤトラムの今後の展開は注意深く見守る必要がありそうです。

世界初のゴムタイヤトラムとなったナンシーのTVR。郊外部ではトロリーバスになる。 クレルモン=フェランのトラムはトランスロールを採用。 磁気ガイド方式のPhileasを採用したのは、フランスのドゥエ。
トロリーバスに光学ガイド装置を付加したCIVIS。スペイン・カステリョン市 パリ近郊のBRT、tvm。 リヨンのトロリーバスによるBRT、Cristalis線。

100年以上の歴史をもつトラム

 現在の路面電車の基礎となったのは、19世紀末のアメリカでスプレーグ発明した路面電車です。それ以降、トラムはいろいろな歴史をへながら、身近な都市交通機関として世界中でつかわれてきました。  昭和30年代ブームではチンチン電車がその代名詞の一つして語られます。懐かしい乗り物〜新型のバリアフリーの電車になっても、違和感なく都市の顔としてトラムが活躍できるのも、トラムの持つ長い歴史のなせる技でしょう。トラムはまさに懐かしくて新しい乗り物なのです。  古い電車の文化的な価値も見直されつつあります。中には、古い電車を観光資源としている都市もあります。アメリカのLRTでは、新型車両の走る新設の路線でも、昔の電車をイベント用に運行しているケースも珍しくありません。
 ドイツやアメリカなどでは、古い電車を改造して観光用の電車にしているケースもたくさんあります。アメリカの一部の街の新設したLRTでは、博物館から古い電車を引っ張ってきて観光用に走らせているところもあります。

 歴史の面を強調しましたが。基本的なシステムは、今も昔も変わらないので、車両さえ置き換えてやれば近代的なLRTに生まれかわるトラムも少なくありません。ドイツのトラムの大半は、100年以上の歴史を持つ路線です。車両をどんどん近代的なノンステップ車に置き換え、停留所の改良、さらに延伸工事を行って今も都市の主力として活躍している路線はたくさんあります。長年使った路線があるのだから、それを活用して今の時代に合った交通機関を作らなければもったいない、ドイツやオランダの人たちはそう考えてトラムを少しずつ改良しつつ使ってきました。日本のトラムもまた、努力すればドイツのトラム同様の近代的なものになれるところは少なくありません。

レトロな電車として観光客に人気のリスボンのトラム。今やリスボンの重要な観光資源で、経済にも貢献。 高知の土佐電気鉄道は、世界のレトロ電車を集めて走らせる。この電車は、オスロからやってきたもの。 京都の梅小路で保存運転される最古の市電。動く博物館としてトラムを保存する意味もある。
スイス・バーゼルのレトロ電車。団体貸切車として活用される。車両を近代化して行く方策もある。その際、保存や観光用に古い電車を残すのも一手。 懐かしのチンチン電車として有名な大阪の阪堺電車。地元の人や住吉大社への参拝客に愛され続け100年。これは、昭和40年代の内装に再現された161号車。 伊予鉄道の坊ちゃん列車。明治時代のSL列車を再現し、松山の街の路面を走ります。



古いものを大切にしつつ、最新の電車もつかっていく・・世界中のトラムはまさにそんな存在です。






| トラム(LRT)が見直される理由へ | トラム/LRT用語集へ |



Homepage
Copylight (c)Soichiro Minami 2003-2012 All Rights Reserved
このページの無断転載を禁じます

|作成:2006年10月22日、最終更新2012年3月18日|


"Le Tram"トップ>トラムとは?(このページ)