ルーアンでは、メトロ(トラム)の導入に引き続き、東西方向の交通軸として、2002年4月、BRT(専用レーンバス)であるTEOR(Transport Est-Ouest Rouennais)を導入しました。ヨーロッパでは、バスの積極活用も広く行われており、バスレーンは比較的簡単に実現できることから、多くの街で導入が進められています。ルーアンのTEORは、バス専用レーンを一歩進めて、路線の大部分を専用レーン化したバスシステムです。ほぼ全線専用レーン化されたことにより、軌道系交通システムに匹敵する定時性・輸送力を確保できます。TEORは単なるバスというよりは、「バスを使用した路面電車システム」と言った方がいいでしょう。フランスでは、BRTのことをBHNS(Bus à Haut Niveau de Service、高レベルサービスのバス)と呼びます。なお、フランスの都市交通財政制度上、BHNSはLRT(トラム)と同様の補助金制度が適用されます。それゆえ、LRTの代わりにBHNSを導入する都市も少なくありません。ルーアンのTEORは、フランスにおけるBHNSの先進事例の一つです。
TEORで使用されるのは、普通の連接低床バスが基本です。さらに、光学式ガイドウェイバスであるCIVISを試験的に導入しています。CIVISはルノーグループによって開発されたトラムとバスの中間的なシステムで、道路上にペイントされた白線をデジタルカメラで読み取ってガイドするシステムです。外観はバスに近いですが、フランスではトラムの扱いを受けています。CIVISはトロリーバスタイプとディーゼルエンジンタイプの両方がありますが、ルーアンではディーゼルエンジンタイプを導入しました。
ルーアンでは、ガイドウェイシステムは停留所のみに限定して使用されます。すなわち、停留所部分にのみ白線が引かれ、停留所前後の区間のみ白線によるガイド走行で、それ以外の区間は普通のバスとして運行しています。停留所部分のみガイドとすることによって、停留所のホームと車両との隙間を無くしてバリアフリーを実現しているのです。
現在、TEORは3系統運行されています。都心部から分岐点のMont Riboudetまでは道路中央のセンターリザベーションの専用レーンとなり、Mont Riboudetから先は各線異なったスタイルとなっています。T2系統は、引き続きセンターリザベーションレーンとなります。T1は丘に登る通常の片側1車線道路をバス専用道路とした道となっており、トラム導入よりももっと大胆な専用レーンの採用です。CIVIS用の白線は、停留所部だけです。センターリザベーションレーン区間の停留所は、トラム(メトロ)の停留所と同じデザインとなっており、トラム的なバスシステムであることを強調しています。
TEORはその後延伸がなされ、都心区間ではトランジットモール区間も新設されました(なお、ルーアンのトラムは都心は地下線なので、トラムにはトランジットモールは無く、BRTのみトランジットモールがある状態となっています)。2012年より新型車であるCrealis Neoが導入され、塗装も白基調のものに一新されました(車両解説はこちら)。
地下鉄より安価とはいえ、トラム(LRT)の整備はお金がかかります。LRTのメリットも、高価さも、導入の困難さもよく知っているルーアンは、東西方向は安価なBRTで幹線系統を整備したのです。トラムとBRTを組み合わせて、幹線系統を整備したルーアンの賢い手法は、是非とも日本も見習いたいものです。
ツイート |
|作成:2004年5月11日ページ作成、最終更新2014年9月15日|
|